かてぃー先生の日記

国語の先生(女)。仕事とか私事とかいろいろ書くよ。

私のバイブル

私は結構な読書好きで、特に小学生の頃は近くに図書館があったから、毎週大量に借りて本ばっかり読んでいた。

今でも読み始めると一気に読む。

小学生じゃなくて、自分でお金を稼ぐようになった頃から、「本は借りずに(新品を)買う」という贅沢はしても良いという決まりにした。

ただ、買う→一気読み→買う、を繰り返しているので、本が溜まって仕方がない。

なので、たまにBOOKOFFでまとめて売る。

どういうジャンルでも割と好きだけど、「これはバイブル…!!」と思って、売らずに手元に残しておく本もある。

感動する話とか、有名作品(いつか授業で使えそう)とかも残すけど、私が特に好きなのは、自分の人生を前向きにしてくれる、平たーく言えば、「これ読むとなんか頑張れる!」みたいな本。

そういうのは定期的に読み返す。

ここで一挙ご紹介したいと思います。

 

辻村深月スロウハイツの神様

今現時点で、私のベストオブベスト。

これは定期的に読み返したくなる。

売れっ子脚本家の環と、「スロウハイツ」で共同生活を送るクリエイター(漫画家とかラノベ作家とか画家とか編集者とか)の話。

環は大変に売れっ子なんだけど、売れっ子になり、売れっ子であり続けるためには、相当な気概が必要なんだと感じさせられる。

 

ああやって、「チヨダ・コーキの小説のせいで人が死んだ悲劇」を嘆いて、責めた人たちを私は絶対に忘れない。その人たちの前で、オスカー賞を手にしながら言おう。「私は、チヨダ・コーキを読んで、それを支えに生きてきました」と。

(下巻、環)

環は、大人気ラノベ作家のチヨダ・コーキの作品を人生の支えとしていたんだけれど、自分も売れっ子になることで同じ土俵で会えるようになった。

会えるどころか、スロウハイツで一緒に暮らす仲間として迎え入れている。

 

だけど彼女は、忘れなかったのだ。

覚え続け、そして今僕のところまで、チヨダ・コーキの目の前まで自分の力でやってきた。

(下巻、チヨダ・コーキ)

 

有言実行のかっこよさ。

自分の力で道を切り開いていくのはとてもかっこよい。

 

「環は、自分の書いたシナリオで人の心に影響を残したんです。大袈裟に言えば、その後の生き方を少し変えてしまうぐらいの、そういう革命を起こすような力が欲しいと思っているし、自分の脚本ならそれができると信じてる。」

(下巻、狩野)

 

スロウハイツの同居人・狩野から見た環。

仕事に対するプライドがはんぱない。

これぐらいの情熱を持って生きれるのって、すごく疲れそうだけど、とても羨ましいこれを読むと、環の情熱に圧倒されて、反省して頑張らねばって気分になる。

 

辻村深月ハケンアニメ」

 「スロウハイツ」と同じく、辻村深月作品。

アニメ制作会社で、「覇権アニメ」(そのクルー最大のヒット作)を作るために奔走する人たちの話。

「スロウハイツ」の環が天才型(とは言えかなり努力しているんだけれど)だとしたら、「ハケンアニメ」の人々はもうちょっと凡人寄り。

「アニメ」という憧れの舞台に向かって、苦悩する人々の物語、とでも言いますか。

 

「どんだけ嫌でも、飽きても、派手さがなくても、そこに座り続けてずっと紙やパソコンと向かい合うしかない。席を立ったらそこで取り逃すものだってあるし、齧り付くように、ひったすら、やるしかないんだ。気分転換なんて、死んでもできない。」

(「王子と猛獣使い」、王子)

このセリフを言っているのが、わがままだけど天才といわれる若手監督・王子。

天才といわれる人だって、ただ生まれつき天才だったわけではない。

天才すら努力しているのだから凡人はいわんや。

 

 

「X大の法学部を出てまで、どうしてうちなの?」

「野々崎監督を超える、アニメが作りたいんです」

(「女王様と風見鶏」、瞳)

 

儲からないとか、キツいとか。そんなことを一から説明しなきゃいけない相手に、話したいことなんて何もない。

―私は、絵を描くのが好きだ。

(「軍隊アリと公務員」、和奈)

 

私自身、「何でわざわざ学校の先生になったんだっけ?」って迷うことはある。

ちなみに、上記と同じようなことは結構言われる。

でも、夢とか好きとか、そういう力がなんだかんだで一番強い力を持っているし、そういうものに出会えた人は幸せだと思う。

 

朝井リョウ「何者」

映画化もしてたし、本も売れていたから結構な有名な作品かと思います。

就活に励む四人の大学生の物語。

ツイッターが作品の大きな仕掛けになっている。

「意識高い系」を批判的に描いてて、「うわあああーあるあるーーーー!!」ってなる。

なるんだけど、そこからの大どんでん返しがすごすぎる。

私は読んでて死にたくなったサイドの人間ですが、そういう人はこの作品を戒めにしたほうがいい。

 

「自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くったてがんばるんだよ。」

(理香)

 

「スロウハイツ」や「ハケンアニメ」が「頑張った末に成果が出た物語」であるのに対し、こちらは「成果の出ない頑張りを続けるダサい自分」や「頑張りすらできない自分」がメイン。

「頑張る人」って、本来そんなにキラキラしたもんじゃないんだな。

でも、その泥臭い努力を続けるよりほかにない。

 

高殿円ポスドク!」

私も院生の端くれとして、研究職の先行きの暗さは存じております。

でも、それがすごく魅了する生き方であることも分かる。

私が先生をしているのは、研究職よりかは安全な位置から、学問を続けたいから。

だから、ポスドク(博士課程を修了したが正規就職できない人)が主人公のこの話は他人事とは思えないような。

 

「同じ月収一〇万のワーキングプアでも決定的に違うもの。それは俺は自分に自信があるんだ。自分のやりたいことがある。これでのし上がりたい仕事があるんだよ。」

(貴宣)

 

日本の雇用制度って、「どこに就職するか」が最大の観点になってると思う。

でも、「どこに」ではなく「何の仕事で」戦えるか、それを考えるほうが私は好き。

自分の未来は自分の能力で切り開いていける人になりたい。

 

ポストというものは、だれか独りに餌のように与えてもらうものじゃない。

かといって、牡丹餅のようにどこからかふってくるものでもない。

 

江國香織「左岸」

ここまでが、結構「頑張る系」の話だったけれど、ちょっと路線変わります。

主人公茉莉の生涯を描いた、上下二巻に渡る結構な長編なんだけれど、この茉莉が「何か一つの目標に向かって突き進む系」ではない。

むしろフラフラ系。

だけど、何かしらの信念を持って生きているし、人の人生っていうのはこれぐらい大きく変わっていくものであるのが真実なのかもしれない。

 

「考えるより、まず、飛び込む。それが必要な場合もあるのよ」

(上巻、ミチル)

 

これは、「目標に向かって熱意を持つ」とは全然別のベクトルの力。

で、私にはなかなかこれが足りていない。

茉莉はこれを実践していて、その結果波乱万丈な人生ではあるんだけれど、その人生も悪くない。

 

茉莉が幼稚園児の頃から中年までの半生を描いているので、ライフステージもかなり変化している。

その中で、いろんな人と関係を築いている。

若いうちは、普通に何となく生きていてもいろんな人と何かしらの関係が生まれるものだけれど、中年になってもそのステージに合わせた人間関係がちゃんとあるって、実は結構しっかり生きている証拠だと思う。

 

うったうったうー、うったうったうー、うったうったうー。

あいかわらずあたしは一人ぼっちだ。

(下巻、茉莉)

 

逆説的だけど、人間は結局は根本的なところで一人ぼっちなのだと思う。

茉莉はいろんな人に囲まれて生きてきているけれど、結局自分は一人ぼっちという結論に至ってる。

でも別に悲壮感はない。

一人ぼっちの自分を受け入れて、でも自分の居場所を作っていくっていいなと思う。

 

辻仁成冷静と情熱のあいだ Blu」

⑦の「左岸」もそうなんだけど、辻仁成×江國香織で1セットの作品。

「左岸」の対の作品、辻仁成「右岸」は私にはぜんっぜん刺さらなかったんだけど、「冷静と情熱のあいだ」はとてもはまった。

江國香織冷静と情熱のあいだ Rosso」を読んでから読むと、より味わい深い。

 

これは恋愛メインの小説だけど、Bluの主人公・順正に関しては、仕事が彼の人生観に大きな影響を与えている。

(Rossoのあおいも働いてるけど)

順正の仕事は、イタリアでの絵画の修復。

絵という「古いもの」を直す仕事だけど、それって別に新しいものを生み出しているわけではない。

過去と未来がこの作品の大きなテーマだと思う。

 

Rossoがあおいと順正の再会であるのに対し、Bluは再会のその先。

Bluを読むと、Rossoだけじゃ綺麗ごとすぎるし、Bluに書いてあることが本当は現実で直視しないといけないことなんだなって感じる。

 

過去に囚われすぎず、未来に夢を見すぎない。現在は点ではなく、永遠に続いているものだ、と悟った。

(順正)

 

あと、この作品は本当にイタリアの描写が素晴らしくて、ヨーロッパファンとしてはそこもポイント高い。

 

⑦おかざき真理「サプリ」

広告代理店で勤務する女子・藤井の、仕事と恋愛を描いた漫画。

広告代理店の多忙っぷりが良く分かるので、この業界志望の人は読んでおくといいかもね。

仕事と恋愛って、ベタなテーマかもしれないけど、なかなかのリアリティを持って迫ってくる。

 

私はいろんな”都合”でできていて

それは決して男向きではないのだと

(2巻、藤井)

 

あああーーーわかる、めっちゃわかる。

このシーン、片思い?中の藤井が、美容室やら買い物やら行くけど、仕事の都合を優先させると、きらびやかな髪形やら服装はできなくて、結局いつもと変わらない、ってところ。 

 そうなんですよ、私も、職場の決まりで髪は染められないし、毎朝6時半出発で髪セットもできないからただの黒髪ストレート。

ネイルも出来ないし、仕事用の服は「汚れても良い、動きやすさ重視」のやつばっか。

「美人百花」みたいな綺麗なOLさんがモテるんだろうな。

ああいう格好をしているだけじゃなくて、ああいうマインドを持った女の子が。

 

きっと働いている人間はみんな

多かれ少なかれ溺れてる

(6巻、高田)

 

どんな仕事をしていても、それを人生の中心に据えている人であれば、「溺れている」部分はある。

その時にパートナーに捕まりたい、って気持ちがよく分かる。

働く女がパートナーに求めるものは、普通の、ごく一般的な恋愛とはちょっと違うのかもしれない。

 

なお、恋愛パートを抜いて、お仕事漫画として読んでも十分に面白い。

仕事辛い×仕事中毒、的な思いが身に迫る。

 

という感じで7冊、紹介しましたけど、本当はあと2冊書きたかった…!

長すぎるので本日はここまで。