かてぃー先生の日記

国語の先生(女)。仕事とか私事とかいろいろ書くよ。

博士号の有効活用法とは(読書感想文)

最近した読書。

 

羊と鋼の森」宮下奈都【4冊目】

 

 

羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

 

本屋大賞も取っていたらしい。

ピアノの調律師の話。

私も長らくピアノを習っていたから、ピアノの感触みたいなのに共感できた。

こないだ10年ぶりくらいにグランドピアノ触る機会があって、ピアノっていいなーと思ったから、ナイスタイミングな読書。

ただ、ストーリーはまあ無難。

音の比喩とか、淡々とゆったりとした雰囲気とかは良かった。

 

で、記事の表題の件はこちらの本より。

 

ポスドク!」高殿円【5冊目】

 

ポスドク! (新潮文庫)

ポスドク! (新潮文庫)

 

 この作者全く知らず、本のタイトルのみでチョイス。

修士までだけど院生やってた自分としてはすごい面白い!

まず、タイトルの「ポスドク」だけど、これはポストドクターの略。

つまり、博士号を取った後、定職が見つからない状態の人。

博士号取ったら皆研究者になれるんじゃないの?って思うけど、そんなにたくさん研究職はない。

博士号っていうのは、あくまでただの卒業資格。

だから、普通の大学生同様、自分の就職は自分で何とかするしかない。

博士号は、医師免許みたいに「取ったからそのまま就職に繋がる」っていう資格じゃないのだ。

ただ、研究職を探すと言ってもなかなか難しいので、正社員じゃない仕事、例えば塾講師とか大学非常勤とか、で食いつなぐ人が多い。

ポスドク!」の主人公も大学非常勤で、月収10万くらい。

ポスドクあるあるって感じ。

そこに、甥っ子が転がり込んできてヒューマンドラマがあったり、主人公に正規雇用のチャンスが舞い込んできたり…ってな話。

 

ヒューマンドラマのパートも良い話なんだけど、主人公が正規雇用を目指してもがくところがすごくリアル。

 

「学校社会で二〇年優等生で生きてきたらもう、内臓どっこも悪くなくても、プライド折られただけで死んじゃいますから。」

(p178、川手)

そうなの、院生プライドみたいなものは私もある。

学校の先生って、社会的に見ればプライドはそれなりに保たれてる。

プライドの為に働いているわけではないけど、プライドの為に辞めないって一面は確かにある。

 

「ああなんて自分は器の小さい人間だろうと、自分を偽悪的に評価する。そうすることで、現状になにか対処しているような気がして安心するのでしょうね。」

(p317、薬膳)

ポジティブを掲げている私でもこれは身に覚えがある。

自分を卑下することは、自己防衛でもある。

謙虚に見せかけているようで、実は何の解決にもならない楽な道を選んでいるだけ。

 

「私、やっぱりショービジネスの世界が好きなんですよね」

(p393、川手)

色々迷うし、学歴があるだけに「もっと安定した職のほうがいいのか」って迷うこともあるけど、結局好きなことをやるのが一番幸せ、なのかも。

けれど、一番大きな理由は"やりたい"からだ。

(p406)

結局、「やりたいこと」に戻ってきてしまうんですよね。

 

ポストというものは、だれか独りに餌のように与えてもらうものじゃない。

かといって、牡丹餅のようにどこかからふってくるものでもない。

たとえ安定したポストがなくとも研究はできる。その頭で、考えることを手放さなければ。(p408) 

私自身、一応正社員に近い身分です働いてはいるけれど、ずっとここにいるつもりはない。

アカデミックな方面と完全に手を切るつもりもない。

自分で常に道は探し続けないと。

 

勉強が好きで就いた教員職なので、研究者と私のモチベーションは結構似ている。

この仕事に就いてるから、やりたい勉強が出来るかといえば、そうではない。

だけど、いつか自分が好きなことを出来るように、模索し続ければならない。

それは、安定して落ち着いた人生を送るより辛いかもしれないけれど、結局ここに落ち着いてしまうのだ。

 

想像しろ。考えろ。考え続けろ。

いつだって頭を使え。お前には武器がある。

(p409)

停滞するわけにはいかないから、どんなに疲れていても考え続けて勝ちを掴みに行きたい。

そんな前向きな気持ちにさせてくれる本でした。

オススメです!